6月のイングリッシュガーデンとダンス


 5月の末から英国にて仕入旅行。海外買付けはアンティーク屋の恒例だが、今回はついでに本場の イングリッシュガーデンと、この時期にブラックプール(Blackpool)で、行われる世界最高のダンス競技会 を観戦した。



 まず、仕入れに関してだが、これは企業機密。ということで、イングリッシ ュガーデンから話を進める。とりあえずこの基準というものを知りたくてホテルのガーデン コンテストで優勝?したというサウス・ケンジントンのホテルに宿を取る。 下の写真はその庭だが、狭いスペースを小物も使い無難にまとめているという感じか。 確かにスキは無いが、どうも感動するというわけにはいかない。



 このホテルは比較的小規模で、価格は高い(ツインで400ポンドくらいか)が、絵画を はじめ調度品は美術品の本物が置かれ、内部には自分でカクテルが作れるプライベート・バーがある。 もちろんベッドなどすべての家具は1920年代までのマホガニーやウオールナットを中心とするアンティ ーク家具だ。写真のように窓辺のちょっとしたスペースにも文様の実に美しいウオールナットのオケーシ ョナル・テーブルが設置されている。昔は良い家具(木)があったものだ。これは今では手に入らない 樹齢100年以上の太いウオールナットの根に近い部分の材料が使われている。さて 朝食だが、部屋まで運んでくれそこで盛り付けるが、いわゆる定番イングリッシュ・ ブレックファストの素材が良い場合の味というのがこういうホテルでわかる。



 ところで、今回撮影に使ったデジカメはニコンのクールピックス990。さすがに写真家たちから 優秀性を認められ賞を取ったことも理解できる。以前はマクロが秀作といわれたXX社のものを使ったが それと比較してみても場の空気みたいなものの再現性は抜群。冒頭で言うべきだったが、ちなみに 写真をクリックすると拡大してみることができるようにしておいた
 さて、下の写真は小さなホールの天井から下がっているシャンデリアだが、伝統的に英国が得意の 鍛冶屋仕事でしあげたアイアンフレームで、プレーンながら確かにセンスは良い。日本のホテルなら 誉めてやりたいところだが、もちろんそうはいかない。一泊400ポンドもとるなら照明は世界的に アールヌーボーが良い。いたずらで、私のところのドーム作のシャンデリアを元写真にはめ込んでみ たが、やはりその方が良い。確かにアンティーク家具は英国製が良いが英国製のアンティーク照明で 感動するものは皆無に近い。フランスや米国の照明はオークションでも高価で取引されるが英国製は 声がかからない。どこの国にも良いものとそうでないものがあるわけだ。



 実は当店(自宅店舗)の西側の家が、突然オーナーが変わり建て替えた。それも相当にセットバック して建て替えたので、当初想定した「人から見えない壁」と考えていた西側が丸見えとなってしまった。 今は他の面と同じタイルを貼るか、それとも何か別なことをやるか考えている。西側だから西日が 当たるのはあたりまえ、冬は良いが夏はエアコンの耐久試験をしているようなものだ。ところで、 屋上に緑を植えると都市の温度を下げられるとか、緑の効用が最近よく言われる。自分とは無縁と 思っていた植木屋的なものが、どうも近頃、頭を悩ます。確かに英国はロンドンのような都会でも 緑にあふれている。ふと、このホテルの壁を見るといろんな種類のからみものが壁を覆っていた。 壁の温度が下がれば夏は涼しく冬は暖かい洒落た家(店舗)にできるかもしれないと 勝手に盛り上がってしまった。



 ところで、ここサウス・ケンジントンはダイアナ妃が学生のころ出没していたとも言われるハイ センスな街で、近くにはハロッズなど高級デパートやブランド店が多い。ダブルデッカーも走るこの 写真を撮ったのは夜の8時ごろだが、この時期のロンドンは日本の午後3時くらいの明るさで、 太陽もぎらぎらしていた。 写真のように商店の壁に鉢がぶら下がっていたが、この花たちは何を食べているかはわからぬが やたらと生きが良くてピチピチしているから不思議だ。ぜひ拡大(写真をクリック)して見てほしい。 もしかしたら切った花たちを鉢に並べた、つまり鉢ではなく花瓶なのか?



 ケンジントンは高級な商業地でもあると同時に古くからの高級住宅地でもある。商業地からほんの少し 中に入るとすぐに住宅がある。それらの窓には下の写真のように緑が置かれている。それもほとんどの家 の窓にである。しかも、どれもわざもので、うならせるものがある。



 ここ、サウスケンジントンではメインストリートに直角に接する道に面して住宅エリアがあり、 それらが高級長屋?のような感じで奥に深く伸びる。考えてみれば銀座3丁目のようなところに 居住アリアを確保するわけだから長屋のようになってあたりまえか。しかし、これらには 歴史とか、風格とか、上品さとか、そして、広大なプライベートガーデンが付属する。



 次の写真は太陽がぎらぎらと輝く夜の8時ごろのケンジントンのプライベートガーデンと、その中に 咲く花たちのワンショット。 このプライベートガーデンとは例のにやけた男優(失礼)とジュリア・ロバーツ(もちろんこれが主演) の映画「ノッティングヒルの恋人」で、夜、二人が鉄格子を飛び越え忍び込んで愛を語った手入れの 行き届いた居住者専用の庭のこと。しかし、どこもかしこもきれいな庭が整備され、イギリス人は みな庭師を兼業しているのではないかと思われるくらいだ。



 その証拠にハムステッドの住宅街では裏庭をのぞくと大量の肥料やら園芸材料がストック されている。・・と、自然に話はケンジントンからハムステッドに移る。 このハムステッドという場所はロンドンの北西に位置する。中心部からは地下鉄で30分 以内だったと思うが、わかりやすく説明すると(格落ちだが)日本の田園調布のようなもの。 このハムステッドは最近では日本人若輩娘達のしゃれた観光スポットに成り下がりつつあるが、 駅から続くスロープをどんどんと下っていくとほとんど居住者しかすれ違わない落ち着いた町並みを 見ることができる。まあ、百聞は一見にしかずで、・・ご覧あれ。



 空間の作り方、色の使い方、一見して雑に見せ方、など、それぞれの家のオーナーのセンスが光る。



 ホクシャーを生垣にしている家があったが、ごらんの通り、元気さであふれている。また、 花の色が実に良い。前にフィルムからスキャナーでデジタル画像にしたが、デジカメの生画像データ を使うのがこの通り最も綺麗。もしこのホクシャーのマクロ画像が綺麗に見えないようならお持ちの パソコンのビデオカードをハイスペックなものに変えてほしい。



 英国ではレンガや門など、いかにも長く使えそうで質の高いものが多い。特に高級というもので はないが、この裏門?もさらりと私の平均点をクリアする。日本で山のように発生する ゴミは、実は日本人が自ら作り出しているような気がしてならない。駐車スペースの周りに無機質な フェンスを張り巡らさなくても、このようにアレンジすればほどよく調和する。



 ツタというか、各種はわせものを巧みに使う技はゲットしておきたい。玄関や門にからませる だけで味が出てくる。手入れは大変だろうが・・



 下の写真だが、このようなレンガの味わいは日本ではほとんど見かけない。最近はレンガやタイル張りの 家が多くなったが、良く見えればまったく別物だ。日本のタイル張りの家が何でつまらなく見 えるかといえば、工場で機械が大きなタイル・ブロックとして部品化してるからだろう。 タイル調のダイディング・パネルも日本を悪くする方で大いに貢献している。本物を見分ける のを仕事にしている宿命か、まがい物には敏感になって困る。



 人間、うろうろしていると腹もへる。30代後半の地元子連れ夫婦に 美味しいレストランを紹介したもらった。近くまで行くと道に椅子やテーブルを出していた のですぐにわかった。下の左の写真はウエイターたち視線をそらした瞬間に撮ったもの。 右側の写真はそこで出てきたスパゲティ。 日本でも良く見かけるものを頼んだが掛け値なしに美味しかった。



 しかし、なぜかグリーンの色の切れが良い。それが雑然としていてでもある。 成田に戻るとそれが(植物)とても同じものとは思えない(だれた)茶色グリーン に変わるから不思議。ところで、この地域と逆側というか、ヒースロー(国際空港のあるあたり)の 方は実は(私の主観で申し訳ないが)汚い。



 さて、話はブラックプールに移るが、ロンドンから行く場合はユーストンから 特急に乗る。ブラックプールまでの直行便は無いので手前のプレストンで乗り換える。 写真は列車内とプレストンの駅の風景。列車の運賃はいずれにせよ高いので ファーストクラスを選んだ。朝早くの列車を選べば、フル・イングリッシュブレックファストが 自分の座席でサービスされる。もちろん食事の質は高い。ファーストクラスは一車両に乗客はほんの数名。 専属のウエイターがひっきりなしにサービスしてくれる。日本の新幹線とは違い、 在来線路でありながら300Km以上のスピードを出す。車窓からの景色は最高で デジカメをかまえたが、早すぎてまともな写真は撮れなかった。乗り換えのプレストンまで ファーストクラスなら約3時間のリッチな旅が満喫できる。ところでプレストンの駅員、 ブラックプールからの帰り旅では大変な目にあった。アバウトな返事をするとは聞いていたが 念には念を入れて駅員2人に確認したが結果的には当てにならなかった。目当ての列車は 何番線に到着するか、何時に出発するか、かなりでたらめである。 今回のはごくまれだと思うが、「これだけは信用できる」と言われるホームのディスプレーの 表示を確認して乗り込んだが、さらに念のためにファーストクラスの車掌さんに「これはロンドン行きか」 と確認したら列車内に貼り付けてある紙を指差し「違う」との返事。どたばたと スーツケースを降ろし列車を降りるとほどなく出発。まさに間一髪。 これに乗ったら逆の方向に連れて行かれるところだった。 今回も貴重なことを学んだ。イギリスの駅員に「これはXXですか?」とたずね、調べもせずに すぐに「はい、そうです。」と答えが返ってきた場合はあやしいと思った方が良い。



  ブラックプールはリバプールとかマンチェスターとか、もともとは労働者階級 の保養地で、パリのエッフェル塔を下から半分くらい取り除いた半端なタワーがここの目印。気取ら ずにそこそこ安い価格でレジャーが楽しめる。海岸もあまり綺麗ではなく私はここでは泳ぎたくない。 6月はじめとはいえ、本当に寒くて不安定で冬と夏が回転ドアのような毎日が続く。この季節でも雨が降り 出したら防寒具が必要なほど冷え込む。半そでやTシャツだけで行けば夜中に競技会がはねた後、タクシー を待つ間、凍え死ぬほどの体験(大げさか?)を味わえる。 ここブラックプールでは徹底してお金を使わない方が良い。ダンス競技会の会場はシャル・ウイ・ダンスの ロケ現場となったタワーの下のホールではなく、町の中心部のウインターガーデンだ。この近くには B&Bが多数あり、一泊20〜50ポンド程度で泊まれる。食事も中華料理、インド料理、イタ飯など 日本食を除き安くて豊富。特にイタリア料理の店はお勧めで、ここにはイタリアチャンピョンも 含め多くのイタリアンが食べにきていた。忘れないようにその場所の写真も撮ったが電柱に消された。 ここに書いてある文字は「MAMMAS」。ダンス競技は夜中まで行われ、会場から遠いイ?????など という高級ホテルもあるが、(前にも書いたが)競技がはねた後に、雨っぽい極冷えの中でのタクシー (ベントレーか)待ちの試練を経験しなければならない。



 さて、競技だが、さすがにその質は高く、有名選手たちのまさに真剣な戦いの場を見ることができる。 日本に戻りその約1週間後に開催された日本最大のダンス競技会が武道館で行われたが、 そこにも当然、ブラックプールで見た有名選手も参加していた。しかし、なぜか気合の入り方が 違う。しかしそれはブラックプールに行かなければわからないことだろう・・ ところで、今回は数十年守り続けた優勝者(国籍)の座をイギリスからイタリアに明渡すかどうかの歴史的な 転換点でもあった。自分の時代にその伝統を覆すのが忍びなかったのかどうかは知らないがアービンも 引退し、新しいブラックプールの幕開けの場でもあり、そこに(私も)いられたことは幸運だった。優勝した スキアボーはイタリア人でパートナーは英国人という混合カップルだったが、昨年出場しなかっ たこともあり他の決勝メンバーより予選2回分多く踊らされたのが祟ったのか、クイックではよれ気味のパー トナーを脇に抱え必死に?踊りぬき、総合では優勝を勝ち取った。総合2位のホーキンスは良く跳ねるバンビちゃん のような感じで、(英国ダンス復権のためなら)できればあのベッカム(サッカー)をトレードしたいと思ったのは 私一人ではないだろう。(写真左は観客まばらな昼の予選の会場、右は満員の深夜の準決勝風景。)



21th June 2002